ひとりごと

ぐだぐだと思ったことを思ったままに

映画マッチングの解釈


もともとホラー作品はかなり苦手な方で、逃げ場のない映画館でなんて絶対に見ないし、テレビドラマ等で放送されていても怪しい部分は早送りして結果を確認した上で見れそうだったら戻して見るレベルの人間なんですが、「佐久間くんが出ているから」という理由で死体もゴロゴロ出てくるし殺人シーンもあるマッチングという映画を繰り返し鑑賞していたらどんなシーンでも画面を凝視しながらポップコーンが食べられるようになりました。

慣れって怖いですね。

内田英治監督的には全然怖くない内容のようですが、個人的には耐性レベルが少し上がった気がします。








考察ドラマを見ても自分で細かく考察することはあまりなくSNSで展開されている考察を読み漁る専門の人間なのですが、この作品は映画を見た段階で気になることが割とたくさんあり、その上で小説を読んだら想像以上にマッチングという世界観にのめり込んでしまったので、考察というレベルには達していませんがわたしなりのこの作品の解釈を残しておきたいなと思います。













※前提※
殺人については、映画/小説/パンフを素直に受け止めて同僚尚美と5件目の片岡先生のみ犯人は影山、それ以外は吐夢だと思っています。



小説未読の方におかれましては、こちらの原作試し読みを読まれることを心の底からお勧めします。
ウェディングプランナーの輪花が出会う不気味な男、そして巷で起こる連続殺人事件の真相は――? 【土屋太鳳 × 佐久間大介 × 金子ノブアキ 映画「マッチング」原作小説試し読み】 | カドブン


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◆吐夢がアプリ婚殺人を犯す理由
小説で解決。
原作試し読みの部分に全部書いてあります。わたしが何かを書くよりたぶんこれ読むのが1番理解できる。
すごく簡潔に言えば、マッチングアプリで出会った夫婦に「真実の愛」があるのかを確認して、愛がなかったから殺した。

ちなみに被害者の顔は×の傷が入れられているのではなく、おそらくあれは十字架。吐夢が考える「真実の愛」は聖書から来ているものだから。


◆影山が輪花を見つけた瞬間
映画を見た時は、和田が覗き見をしている画面を見た時かと思っていましたが、恐らく輪花がウィルウィルに登録してすぐ見つけていると思います。
小説には、ナガタウェディングとの企画会議に、特に主任コーディネーターの方(輪花)に出てくるよう発案したのは影山だと書かれています。
本社ではなく輪花が所属する支社を選んだのも恐らく影山で、地域密着型の支店だからタイアップが組みやすいとかそれっぽい理由をつけて支店を指定して、輪花との接点を作ろうとしたのだと思っています。

映画に出てきた週刊誌内にも、マッチングアプリではパスポートなど本人確認書類を提出する必要があり、というようなことが書かれており、回想シーンの年齢を考えると影山のは「りんか」という名前は覚えていたはずで、ウィルウィルに登録してくる「りんか」という名前の女性を片っ端から全員調べていたのだろうと推測できます。
このあたりの執念が影山の怖さ。最後の輪花を襲おうとするシーンもそれはそれは怖いけれど、それだけじゃなくて、輪花と初対面した時から復讐する計画を立てていたこと、その上であの対応を取ったことが何よりも怖い。

ちなみに吐夢もアプリの新着通知を取っており、輪花が登録したタイミングで輪花の存在に気づき、直感的にいいねを押しています。
だから吐夢と影山、父親違いの兄弟は同じタイミングで輪花のことを知ったということ。

アプリに映り込んでいた絵の、四葉のクローバーを持った輪花と一緒にいたのは赤い服の女の人だったから節子なわけで、輪花は25年間母を拉致監禁している人の絵を25年間部屋に飾り続けているわけで。それに気づいた時は背筋が凍るかと思いました。


◆吐夢の年齢
和田が覗き見している画面で、吐夢の誕生日は1999/3/4と確認できます(小説では誕生日は2月とだけ記載)。水族館の写真撮影コーナーの日付が2023/9/25になっているので、現在の吐夢の年齢は24歳のはず。アプリ上の吐夢の年齢が25歳になっているのは、25年前に出て行った母、25年前に妊娠した節子、「25」というキーワードと合わせるために時空を歪ませた結果。(あと吐夢「今週入会」になってるけど利用開始日は2018/11/28になっているので全くもって今週入会ではない)
ちなみに芳樹の回想シーンで映るチャット日付は1998/7/24で2人の崩壊した関係がうかがえるけど、影山の回想シーンで映るチャット日付は1998/5/14で直前に2人で旅行を楽しんでいることがわかる。
時系列的には、妊娠→決裂→唯島家訪問→節子の家で刺す→逮捕→釈放→保育園訪問→拉致→出産かなあと思っています。
人を刺したのにすぐに釈放されているのは、芳樹側からの被害届が恐らく出されなかったため。不起訴になっているからだと思っています。吐夢をコインロッカーに捨てているので留置場での出産はあり得ないし。
最初吐夢の誕生日が99/3/4になってることを見落としていて、9月の時点で25歳?!妊娠期間どこいった?!!妊娠した瞬間生まれた?!!とか思ってたけどちゃんとお腹の中で育てられていたようです。
あれだけリスカして逮捕もされて精神不安定だったはずなのにちゃんと産まれてきた吐夢くん…

狂うほど愛した人との子どもなのにコインロッカーに捨てた理由について、監督はティーチインで「人には二面性がある」というような感じで少し濁して回答されていたようですが、個人的にはその時の最優先が吐夢ではなくなっていたからかなと思っています。
芳樹に溺れていた頃はもちろん芳樹が最優先で、だから影山が帰ってきてもチャットに夢中だった。吐夢が生まれた頃はすでに未知子を監禁し始めていて、まだ「未知子を愛することは芳樹を愛すること」の領域までは達していなかったかもしれないけれど、それでも芳樹との子どもよりも未知子を優先するくらいにはなっていた。
ただ、あの山奥から街中の駅(試し読みにもあるプロローグから、コインロッカーの外では人間の足音が聞こえ続けていることがわかるため、割と混み合っている駅=街中の駅と想像)のコインロッカーまで連れて行ったのは、吐夢に対して少しの愛情は持っていたからかなと思っています。

ちなみにウィルウィル紹介文によると吐夢は自分の仕事を「環境系の仕事」と表現していて、体型は痩せ型を選択していました。
尚美が吐夢のページを開いた時に「新規入会」のマークがついているのは、小説とは合っていないし利用開始日とも合ってないけど映画内の物語としてはおかしくはないかなと。2件目までの被害者夫婦がウィルウィルの利用者だったとは映画内では明言されていないのと、インスタで見つけた夫婦がたまたまウィルウィルの利用者だっただけということもありえるので。というか小説の中では1件目の被害者は吐夢と接点のある人でしたが、2件目以降の被害者は一切接点がなく、吐夢にとってはウィルウィルを通して標的夫婦を探しているわけではないのでほんとたまたま全員がウィルウィルを使っていた夫婦だった、というだけなんでしょうね…


◆手紙を受け取った未知子が笑う理由
小説で解決。
映画を見た時は、あの人が節子だとミスリードさせるためだと思っていましたが、確かにそれも狙っているとは思うけれどちゃんと理由がありましたね。
節子は未知子を監禁してから、自分と同化させるために未知子の中に自分を入れようとしています。自分の苦しみを、おそらく芳樹のことを好きになってからの自分の気持ちとともに教え続け、未知子としての記憶を埋もれさせて行った。手紙を受け取った時の未知子はすでに自分の家族のことを忘れてしまっており、植え付けられた節子の記憶と共に生きていたので、節子のような反応をしてしまった。


◆吐夢のストーカーレベル
小説で解決。
一度会った人の家を突き止めて訪ねるのはそれは立派なストーカーだし恐怖ではあるんだけど、ストーカーというのを強調するには少し弱い気がして。でも小説にはもっと凄まじいストーカーシーンが描かれていたので納得しました。
尾行するのは当たり前、携帯スって(落としたって言ってたけど絶対落としてない)スパイアプリ入れて自宅にカメラと盗聴器仕掛けるまで書かれたらもう凄まじいストーカーです。全くもってピースフルなファンではありません。
危害は加えないと言っているけれど、確かに物理的には危害を加えていないけど精神的にはしっかり危害を加えている気がします。そして厳密には「僕は世間で言うストーカーですが(今現在は自分が愛する人に対しては)危害は加えません」ですよね。過去に好きな人に危害を加えたことはあるし、真実の愛が確認できない夫婦は殺害している。


◆吐夢が呼んだ警官が来た時の芳樹の反応
芳樹は輪花から吐夢のことを一切聞いていないので、あの時の不安そうな芳樹の表情は、節子が来たと思ったからなのかなと思っています。名乗らない電話が節子からのものだと確信している芳樹にとって、25年前突然家に来た節子の記憶を元に再び節子が訪ねてきたと考えてもおかしくない。
ちなみに小説で輪花は「『芳樹さんいらっしゃる?』って。お父さん、心当たりある?」と聞いています。だから芳樹はあの電話が節子からだとすぐに確信した。


◆輪花と片岡の関係をマスコミと警察に流した犯人
小説で解決(?)
小説では刑事の西山視点として、この記事は輪花を追い込むために影山が流したのだろうと書かれていましたが、そもそも影山はそのことをどうやって知ったのか?尚美も恐らく影山とそれなりに仲良くなっているだろうという推測から、尚美と雑談をしている中で影山が聞き出したんだろうなと思っています。最悪高校の時の教師だったという情報だけで恋仲だったとリークしていそう。


◆小指との記念撮影
そもそも何で小指と記念撮影をしているのか。パンフレットの中で佐久間くんは「台本であのくだりを読んだ時、『吐夢はネクロフィリア(死体愛好家)なのかな』と思った」「でも、考えていくうちに、吐夢が興味を持っているのはたぶん死体ではなくて、"死"そのものなんだろうと」と話していますが、撮影後に小指を雑にゴミ袋に捨てるところからして死体そのものには興味はないんだと思います。もし興味があるのであれば持ち帰ると思うから。
小説の中での吐夢は、そこで生きた人の生き方や死に方を夢想することは死者との対話に等しいことだと考えています。人付き合いが下手で生きている人間と上手く関われなかったし他人に対して興味があるわけじゃない吐夢だけど、たぶん人と会話すること自体が嫌いなわけではなくて。人付き合いが下手だからこそ人の心を自分の中で勝手に作り上げることには長けている気がして。片付けをしながらそこの住人だった人と対話をしている、その中であの部屋の住人と記念撮影をする感覚で小指と記念撮影をした、ただそれだけのことなのかなと思ったりもします。


◆警察の聴取
「誰かが僕になりすましてメッセージを送っていたとしても不思議ではありませんね」はその後片岡先生殺害後に送られてくるメッセージと写真が、影山が吐夢になりすまして送られていることの伏線。


◆常温管理されている卵
芳樹の食欲がなくてご飯を残してしまうシーン。
奥の列に4個、手前の列に2個残っている卵パックがキッチンに出ているんだけど、冷蔵庫管理しなくて大丈夫なのか心配。恐らく10個入りなので4個使用済だと思うんですが、友だちと話していたら、2人分のカツ丼に4個使ったのでは?店では常温管理されているんだから、今日買って今日4個使ってこれから冷蔵庫管理するのでは?と言われて渋々納得しました(笑)
心配だから早めに冷蔵庫に入れて欲しい!!


◆唐突に現れる茄子
小説で解決。
芳樹が節子に別れを告げるシーン。冷蔵庫を開ける音もしないのにまな板の上に唐突に現れる茄子が気になって仕方なかったけど、あれは冷蔵庫前に置いていた段ボールから取り出していたらしい。


◆尚美が輪花を家に呼ぶ時間
小説で解決。
吐夢が家に来たのは明らかに日中なのに何故夜に輪花を家に呼ぶのか、今夜来れる?と言われた輪花が尚美を心配してその足でそのまま尚美の家に何故行かなかったのか、その辺が映画を見ただけでは不思議でたまりませんでした。
小説では、吐夢が尚美の家を訪れたのは朝の出来事であり、その日尚美は仕事で輪花は休暇中、尚美は一度は今すぐ職場に来て欲しいと言うも仕事中に話せるような話ではなかったので家に帰るであろう夜8時頃に家に来て欲しいと改めて依頼しています。
で、そのやりとりを盗み見していた影山が先回りして殺すという…(吐夢はあの時尚美に影山の本当の姿について話しており、夜輪花を家に呼んでそのことを伝えようとしていたから。吐夢から輪花に直接話さなかったのは、会おうとすると警察を呼ばれてしまうから)


◆芳樹の死
1回目に見た時は情報量が多すぎて、芳樹って湖畔に行ってたよね?節子の家知ってたってこと?未知子が監禁されてたことも知ってたってこと?!!それでいて自分は通常生活を送ってたやばい人?!!って思ったんですがそうじゃなくて、芳樹が取った2回目の電話で節子に住所を教えられて初めて家を訪ねた、その後橋で発見された、という流れですね。
だから、輪花が芳樹にかけた最後の言葉は「お父さんの顔なんて見たくない」になってしまった。

小説にも明確に自殺か他殺かの記載はなく、パンフレットによると演者に対しても明らかにされていないようですが、個人的には誘導された自殺だと思っています。
自分の不倫のせいで未知子が25年間監禁生活を送ることになったことを知った時のショックと絶望、後悔は計り知ることができません。節子が言っていた通り、未知子の今の姿を見て死にたくなったのだと思っています。ただ、節子はそうなることがわかっていて芳樹を家に呼んだ。だからロープは節子が準備していたものを使っていると思っています。

小説では、吐夢の車で節子の家に行く道中にあの橋を通っていますが、映画の中でのあの橋は節子の家のもっと先にあるのではないかと思っています。
もしも節子の家から自宅に戻る最中なのであれば、警察車両に乗って輪花が現場に行くシーンの画面左側に芳樹の車が止まっているはずなんですよね、警察車両が来る方向が自宅な方向と一致すると思っているので。節子の家山の中だし。でも芳樹の車は画面右側に止まっているので、自宅から節子の家を通り過ぎた更に先の場所にあるんだと思っています。
最初はあの場に芳樹の車があることに気が付かなくて、節子が自分の車で連れて行って殺した可能性もあると思っていたんですが(だから芳樹の車が節子の家の側で発見されないのが疑問だった)、あの場にちゃんと車があることに気づいてからは自分であの場に行って自殺したんだろうなと思うようになりました。

時系列的には、
影山がベッド写真をポスト投函→節子の電話を芳樹が受ける(住所伝達)→芳樹が節子の家に向かう(朝)→吐夢が尚美を訪問(朝〜日中)→輪花と影山が公園に行く(日中)→影山が尚美を殺害(夜)→輪花気絶(一晩)→芳樹発見(翌朝)
芳樹の死亡時刻は夕方〜夜半かけてだと小説に記載があるので、輪花は父と同僚を数時間の間に失っていることになります。


◆「僕はストーカーだけど、あいつは人殺しだ」
吐夢もがっつり人殺しているけれど、吐夢にとってはこれはあくまで輪花に向けた言葉であり、「(輪花にとって)僕はストーカーだけど、あいつは(輪花の大事な人だった尚美も片岡先生も殺した)人殺しだ」という意味なんだろうなと思っています。

ちなみにアパートにすぐにパトカーが駆けつけるのは、吐夢が事前に西山を呼んでいたから。(小説より)

そして影山はおそらく死刑になる。片岡先生殺害の週刊誌、画面に映る場所に「3人以上殺害した場合は死刑になる可能性が高く」みたいなことが書いてあるんですよね。3人の殺害を自供している影山は、たぶんもうこのまま刑務所から出てくることはないのだと思っています。


◆特殊清掃中の部屋への入室に気づかない理由
小説で解決。
2回目の特殊清掃シーン。
輪花はかなりの音を立てて部屋の中に入っているのに、吐夢も立会人も輪花が入ってきたことに全く気づかない様子だったのが不思議で仕方なかったのと、(ざっと調べてみた中では2人1組と明記されているものは見つけられなかったけれど)特殊清掃は2人以上で行うものだと思っていたので吐夢が1人で清掃していることに違和感があったのですが、小説ではもう1人清掃員がいて、その人が外に出たと同時に輪花が到着、吐夢が外で待たせるよう依頼してもう1人の清掃員がゴミ出しに出たタイミングで輪花が勝手に中に入っていたので気づかなかったようです。
ただこのシーン、立会人の胸ポケットに吐夢が写真を入れる時、拒否するような動作を全くしていないのが何度見ても違和感でしかない(笑)


◆「私が昔の私だと思ったら大間違いよ。何もかも失ったから、もう何も怖くないの」の心中
屋上でのシーン。
真相を知りたがる輪花に対して「話したら何かあるんですか?愛してくれるとか」と言う吐夢への輪花の言葉がどうも浮いているようで。今まで吐夢は何かを与える代わりに愛を求めたことなんてなかったと思うので。
ただこの部分、小説では「私が昔の私だと思ったら大間違いよ。何もかも失った今、『あなたのことなんか』もう何も怖くないの」って書いてあるんですよね。もしかしたらこの『あなたのことなんか』がこのセリフの主題なのかな?と思ったりしました。
真相を盾に愛を求める吐夢に対して、応えてやるもんかっていう輪花の意思表示的なセリフなのかなと。そのセリフの後の吐夢の微笑みは、愛なんて与えてやるものかみたいな返答に対してのまだまだ落とすには時間がかかるみたいだな、という笑みであり、その後病院で落として、最後の手を繋いだ後のニヤリの瞬間に繋がるのかな?と思わなくもない…
今までの輪花は、自分が吐夢をぞんざいに扱うことで吐夢の狂気の矛先が父親や尚美など自分の大切な人に向かうと想像してしまっていたから吐夢のことを怖がっていたけれど、大切な人がみんないなくなってしまった今、吐夢に強気に出てももう何も怖くない、ということなのかな。


◆指輪の移動
美知子が付けてた美知子と芳樹の結婚指輪、節子に取られていますよね… 回想映像で美知子は指輪を付けていて節子は指輪を付けていない。でも現在は美知子は指輪を付けておらず節子は指輪を付けている。過去の美知子が付けている指輪が鮮明に映るシーンが恐らくないので完全に一致しているとは断定できないけれど、この事実だけで節子の独占欲が読み取れる気がします。これは小説には一切描かれていない描写で、繰り返し映画を見る中で気がついた時は本当にびっくりしました。

たぶん指輪は拉致してすぐに奪っていて、それは凄まじい独占欲から。芳樹を愛しすぎるあまり振り向いてくれない怒りの矛先が未知子に向き、未知子が身につけていた結婚指輪を奪うことで少し怒りを落ち着けた。その後、自分の苦しみを何度も何度も説明しながら、未知子に節子を植え付けていく。その結果が冒頭の未知子の笑みに繋がるわけで。そんな生活を過ごしていく中で、未知子と過ごすことは芳樹と過ごすことであり、未知子を愛することは芳樹を愛することになるから、だからもう芳樹はいらないという、理解はできないけど描かれている心情としては見たことのある思考になっていく。
最後輪花を刺そうとしたのは、未知子が自我を取り戻しかけたからだと思っています。
25年前は、子どもが出来たと告げても振り向いてくれなかったから、自分が思い描く未来を壊されたから芳樹を刺した。
この時は、25年かけて未知子の中から未知子を抜いて愛する対象になった作品(節子にとっては作品のような感覚だった気がする)が、輪花の言葉によって壊されそうになったから輪花を刺そうとした。


◆病室でのあれこれ
吐夢が携帯で見ているのは上にスワイプしていることと、写真の下に白いスペースがある画面が映っていることから恐らくインスタ。次の標的夫婦を探しているところ。
最初に映画を見た時は、輪花のことが腹違いの姉だと分かったから新しいマッチングアプリを入れて輪花から離れることを選んだのだと思っていたけれど、吐夢が血の繋がりなんて気にするはずがない。
新しいマッチングアプリを始めたというのは恐らく嘘ではないかなと思っています。小説では新しいマッチングアプリの画面を見せているので、嘘というか、本当に次のアプリに移行する気はないけど輪花にこの話をするためだけに入れたというか。だって本当に望みなさそうだと思ってるかな?っていう。
小説の中での吐夢はかなり周りを自分の都合の良く動くよう誘導する描写があって、ここでも、これまでに2回輪花を助けた実績からそろそろ輪花が心を開いてくれるだろうと感じ、ただ輪花からはそういうそぶりを絶対に見せないはずだから、新しいマッチングアプリを入れたと嘘をつくことで結果的に輪花からまた水族館に行こうという言葉を引き出した。小説ではこの辺りの会話は輪花が吐夢を操っているように描かれていますが、吐夢視点での描写がもしあったとすると、操っているようで操られている輪花がありありと見えてくるのではないかなと思っています。
最終的に輪花にとっては、ストーカーではあるけど物理的な危害は加えられていないし、むしろ2回も自分を救ってくれた良い人になっているのが怖いことだなと思います。確かに助けてくれたのは事実だし、輪花を愛しているからこそ命をかけて守ってくれたけれど、すでに8人殺してるし退院後また2人殺すし全然良い人ではない…

アパートを出た後の警察署内で吐夢と輪花の視線が合うシーン、輪花から吐夢への信頼が少しだけ芽生えているような気がしています。だからあんな待ち受けを作られていても気にしないと言える程度にはなっている。気にしてるけど。

輪花の吐夢の第一印象って実は「誠実な人」になっているんですよね。厳密にはまだ出会っていない頃の印象なので第一印象とはまた違うのかもしれないけれど、ウィルウィルとナガタウェディングの企画会議の時に週刊誌の記事を見ながら犯人はどんな人なのかを話しているシーン、輪花は吐夢からきたメッセージを尚美に見せているので会話に参加していないのですが、後ろで「実は誠実な人とか」みたいなことをどちらかの女の人が言っています。これ小説内では輪花の思考になっていて、残酷な殺人犯であるにも関わらず「誠実」だと思う、その輪花の感覚が最終的に吐夢を好きになり始めてしまうところにも繋がっていくのかなと思っています。

ちなみに吐夢くんAB型です。


◆ラスト1秒
吐夢の笑みについて。
映画だけを見た段階では、その前に映るトイレで吐夢がカッターを洗っているシーンとあわせて「吐夢が連続殺人犯である」ことを示している、あるいは、「次はあなたの番かもしれない」ことを示唆しているのだと思っていました。
小説読了後は「(感情を表情に出すことが苦手な吐夢の)ようやく意中の相手を手に入れられた喜び」が爆発しているのだと思ったのと同時に、多分この先吐夢は輪花を殺すことになるんだろうなということも想像できてこの映画の中で1番怖いシーンになった気がします。クリオネが餌を捉えるときのように、吐夢が輪花を捉えた瞬間。でもこれは、天使が悪魔のように捉えたのではなく、悪魔が天使を捉えている。そしてその天使がいつか自分と同じ悪魔になることを楽しみにしている。
マッチングアプリで出会って結ばれた夫婦に愛があるのか疑問に思っている吐夢にとって、同じくマッチングアプリで出会った輪花からの愛は本物かどうか確かめる時がいつか来る。吐夢は迷わず右足を鳴らす(どちらかが死ぬとしたら夫が死ぬことを選ぶ)と思うけれど、もしも輪花が左足を鳴らさなかったら(どちらかが死ぬとしたら妻が死ぬことを選ばなかったら)。その時は容赦なく輪花を殺すんだと思います。
そしてもし、輪花が左足を鳴らしてくれたら。やっと見つけた真実の愛が永遠になるように2人の首に繋いだ鎖を引っ張って心中する。
そんなことさえ想像してしまうほどのラスト1秒になりました。

※マシュマロでこの思考回路の詳細解凍したのでその内容を追記
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正直なところを言うと半分以上願望です(笑) 友だちと話をしている時に最後どう言う終わり方をしてほしいか?って話になって、心中エンドが良いって話が出てからもうそれしか考えられなくなっちゃって(笑)
吐夢は節子の子なので、節子と同じように輪花を監禁(どちらかというと軟禁の方が想像できるかも)して数十年、みたいな内容の方が真っ直ぐ考えた時に行き着く答えだとは思っています。
ただ、恐怖に支配された輪花がその恐怖から左足を鳴らしたとしても吐夢は納得しないだろうなあとも思っていて。殺す最後のその瞬間に真実の愛が一瞬でも芽生えていると考える吐夢なら、この先輪花が心からの愛で左足を鳴らしてくれることはないと思ったその時は、恐怖による愛を最後真実の愛にして閉じ込める、とかやってもおかしくないかな〜という願望…
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吐夢について、小説では最初の方からかなりヤバいヤツだという描写があるけれど、映画ではもしかしたらそこまでヤバいヤツではないのかもしれない?と思ってしまう程度の描写しかない。だからこそ最後絶望的な気分になる。
小説を読んだからこそ楽しめる部分も数えきれないほどあるけれど、小説を読む前だったからこそ楽しめた部分もたくさんあります。
できることならまた全てを忘れて、初見のあのゾワゾワを体感したい。



◆車のナンバー
吐夢:106(トム)
節子:725(セツコ)
影山:812(エンジェルナンバー。努力が報われ、新たな成果を手にする時期が近づいているの意)
芳樹:315(エンジェルナンバー。マイナス思考に陥ってはいけないの意)












いまだにわたしの中でわからない部分もあります。


◆吐夢が節子を母だと認識した瞬間
吐夢がどこまで情報を持っているのかが見えていないので、どのタイミングで確信したのかがわからなくて。
輪花と一緒に節子の家を訪ねた時にはすでに知っていたのだったとしたら、あの場で節子に言わなかった理由がわからない、と最初は思っていたのですが、あの場には輪花も未知子もいたわけで。知っていたとしてもその場では言わなかった可能性もあるのでは?とも思うようになったし、あの家に行ってクローバーが咲き誇っているところを見て、そして何より実際に節子と対面してみて初めてこの人が自分の母親だと確信した可能性もあるな、と思っています。
でも吐夢のことだからもっと前から節子の存在には気がついていたはずで、早々に気がついていてもおかしくはない…

ちなみに吐夢と輪花が異母兄弟なこと、吐夢と影山が異父兄弟なこと、知っているのは吐夢だけなんですよね。


◆湖畔のシーン
芳樹が節子の家を訪れる際に映る湖畔には、右側に大きな木と左側にボート、少し奥にショベルカーがあって、池と地面の境には何もない。
一方で吐夢と輪花が節子の家を訪れる際に映る湖畔には、上記のどれもが映っておらず、池と地面の境には鉄の柵(?)みたいなものがある。
同じ場所に行っているはずなのに、写している風景がひとつも重なっていないことの理由がわかりません。


◆警察が片岡先生夫婦の殺害のみ別人の犯行だと気づかなかった理由
どう考えてもゲソコン(足跡)が違うじゃないですか。
この事件だけ2人の死体が手を繋いでおらず、口にはテープが貼られたままで、(不謹慎ながらも)ご遺体が全くもって芸術的ではない姿勢をしており、ぱっと見で模倣犯の仕業だとわかるけれど警察上層部の頭が固いために同一犯の仕業であると決めつけられたとしても、今までとゲソコンが絶対に違うじゃないですか。
まあ6件目(吐夢にとっては5件目)の事件が起きてしまったので、夫婦連続殺人については片岡先生夫婦のみ影山の犯行だという判断にはなるんでしょうが、ここばっかりは初回からずーーーっと引っかかっています(笑)

映画を見ただけではどうしても警察のポンコツ具合が目立ってしまいましたが、小説を読むと現場警察官の振り回され方もよく理解できたし、吐夢を落とせない警察の苦悩もわかりました。普通の人なら怒るようなところでも吐夢は怒らないから理性を飛ばさせて証言を引き出すこともできないし、ずれた回答をされるから自分たちのペースになかなか持ち込めない。
殺害にも殺害後のあれこれにもかなり時間がかかっているはずだから、いつかどこかの現場で現行犯逮捕されない限り、吐夢が捕まることはないんだろうなと思います。



















映画を見て、小説を読んで、また映画を見てやっと完成する、そんな作品だなと思いました。
吐夢の詳細なストーカー描写や影山のもうひとつの殺人など映画では描かれていない出来事も多く、また、それぞれの心境だったり背景だったり映像では見えない部分もかなり細かく小説には描かれていたので、小説を読んだ後に見る映画は、小説を読む前に見る映画と別物だったなと思っています。そして、その後に再び小説を読むと感じることもたくさんある。
ただ怖いだけの映画じゃなくて、その後ろにある人間関係だったりそれぞれの拗れた愛の形だったり、そういうものが丁寧に描かれているから、何度見ても新たに気づくことはあるし、周りと感想を話し合ってやっと気づくこともある。たぶんまだわたしが気づいていないこともたくさんあるんだろうなと思っています。



輪花も吐夢も影山も、全員「愛の表現」が上手にできない人たちで。

幼い頃母親が自分を捨てて出て行ってしまった(と思っている)輪花は、愛する人に裏切られた記憶があるために好きな人から逃げてしまう癖がある。

家族が誰かわからない状態で育った吐夢は、聖書に愛の正解を求めて「人が己の友のために自らの命を捨てること(=命懸けで誰かを守ること)」こそが真実の愛だと考える。親にとって子は自分の命よりも大事な存在だと表現することもあるけれど、吐夢が考える真実の愛はまさにこのことであり、吐夢はそれを恋人に求めている。

母親が壊れていく姿を目の当たりにした影山は、母を壊した相手を恨み続けると同時に母への愛が大きくなり、人生の全てが母になる。母の逮捕と同時に施設に預けられ、保釈された後も迎えにきてくれることなく愛する人の妻と暮らし始めた母に対してここまで愛を持ち続けられるものなのかと思っていたけれど、節子の家に手紙届けてるから住所知っているんですね?これもしかして保釈後は節子と未知子と影山の3人で暮らしていた可能性もあるのでしょうか???書きながら気づいてびっくりしているよ???












ホラー映画ではあるけれど、さまざまな愛の形を詰め込んだ作品だと思っています。

表現の仕方、愛し方が不器用なだけだと吐夢を擁護することは到底できないけれど、いつか吐夢の心の空白がなくなる時が来て欲しい。産まれた時から孤独で自分を偽ることでしか友だちが作れなかった吐夢が無意識のうちに作ってしまった心の空白を、感情を濾してしまうフィルターを、取り外してくれる人が現れてほしい。猟奇的な殺人犯の吐夢に対してそんな感情になってしまったりもします。



















作品のことだけを書こうと思ったから我慢してたけど!佐久間くんの演技凄すぎるなって思うし、アパートで声低くして警察になりすますのも、輪花の腕引いて階段駆け降りるのも、影山と揉み合って刺されそうになる表情だけはどうしても吐夢じゃなく佐久間くんに見えてしまうのも大好きです!!!あと1回目の特殊清掃現場に警察来て階段降りながら髪の毛わしゃわしゃするのも好きだし!屋上ももちろん好きだし!!ウィルウィルプロフ2枚目の画像拡大して見せてほしい!!!節子に刺された時の顔はたまりません!!!高校時代無理して陽キャ演じてバンドやってた吐夢くん見せてくれ!!!!
















今回書けていない部分、わたしが疑問にさえ思わなかった部分、多々あると思います。Twitter(Twitter)の考察ほぼ読めていないのでいろんな視点からの解釈が知りたいです!マシュマロください!!!
ネタバレ系はTwitter(Twitter)に連携せず回答します!内容によっては随時このブログ追記していきます!よろしくお願いします!!






3/8から映画の副音声始まってます!!
事前にアプリ入れてデータダウンロードしておくだけです!
こんなにも重たい映画を笑って見れます!個人的にはある程度流れとかセリフとかわかっている状態で副音声聞くことをお勧めします!4人のトークに夢中になりすぎて映画の細かい部分入ってこなくなっちゃうので。

是非もう一度映画館で楽しんでみてください!!!!!
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